Brigitta Complex

今日は沈んだ気分を立て直すために『青い珊瑚礁The Blue Lagoon)』を見ていました。溌剌としたブルックシールズの美貌が常夏の楽園に咲き誇る、まるで天国のような映画です。昔読んだワシントンポストの記事で、厳しい環境に生きるゲイの若者たちを取材した感動的なシリーズの一環として、オクラホマでバイブルベルトという土地柄コミュニティとの軋轢に苦しむ少年の日々を綴ったものがあったのですが("In the Bible Belt, Acceptance Is Hard-Won")、自分がゲイだと彼が気付くことになる最初のきっかけが、この映画に出てくる美しい青年の姿が脳裏から離れなくなったということでした。文明に見捨てられた無人島で一糸まとわぬ少年少女が自由奔放に戯れる映像は確かに尋常ならざるインパクトのある世界で、放縦にほとばしるセクシュアルなエナジーには僕も子供の頃見てショックを受けた覚えがあります。彼の場合にしてもセクシーな男性のビジュアルに興奮したと言うだけでなく、イデオロギーの抑圧から解き放たれた絶海の孤島で原初的な自由を謳歌する彼らの姿に、自らそう在りたい生き方の理想像を重ね合わせていたであろうことは想像に難くありません。僕が南の島に常に惹かれるのも多分同じような意味合いなんだろうと思う。だから『青い珊瑚礁』は社会のコードに縛られて息苦しいストレスを感じたときに見たくなる映画です。

そんなふうに後の人生を決定付けるような出会いで映画の登場人物に恋したことってありますか。僕は『ザ・サウンド・オブ・ミュージック』のブリギッタ・フォン・トラップが初めて見たときから異常に好きで、彼女のキャラクターが理想の原型として今に至るまでの嗜好を形成している気がします。そこから始まった11歳ぐらいのブルネットで華奢な体つきで大人しそうな少女が好きという傾向は、多分菅谷梨沙子とかにも繋がっているんだと思う。もちろんブリギッタを演じたアンジェラ・カートライト自体に対しても恋していて、最近は『ロスト・イン・スペース』DVDボックスを自宅から持ってきてアンジェラ演じるペニー・ロビンソンの活躍を毎日見ています。ガジェット警部のかわいい姪もそうでしたがペニーという女の子の名前が昔から好きだ。プリンセスメーカーとかをプレーする際はいつも娘にぺネロープと名付けてしまう。

僕がヒーローよりも悪役の方に惹かれるのは、正義の形は一つだけで、だからみんな同じに見える反面、悪の形にはさまざまなバラエティがあるというところだと思います。善とは社会の定めた一つのモラリティに忠実であることで、そこから逸脱するもの、それ以外の他者、単一に対する複数を悪とする論理構造だから必然的にそうなるんだと思うんですが、そういう意味でロストインスペースではジョナサン・ハリス演じるスミス博士があまりに魅力的すぎる。98年の映画にはオリジナルキャストがカメオ出演している中ハリスだけは出ておらず、シリーズ進行中で既にかなり高齢だったこともあり、もう死んだか健康状態が良くないのかなと思ってたけど、実際はスミス役をやれないなら出る意味がないといってオファーを蹴っていたらしい。性格に癖のあるいかにもニューヨークのユダヤ人の老人って感じで、こんなところにもキャラの魅力の源泉があったんだなと思います。ちなみに彼は2002年まで生きていたそうだ。ドラマの舞台だった1997年を越えドクター・スミスが21世紀を見ることができたのは素晴らしいことのような気がする。先日ラジオで美勇伝の3人が最新流行のドラマにはまっているという話をしていましたが、僕はと言うと60年代のドラマを楽しむ毎日で極度に過去志向の負け犬人生まっしぐらです。『アウターリミッツ』の90年代のじゃなく最初のシリーズとかも見てしまう。マジで21世紀が嫌いすぎる。産業革命以前の社会秩序が復活して欲しいです。